
EAの概要
| ロジック概要 | 逆張り |
|---|---|
| マーチンゲール | あり |
| グリッド | あり |
| スキャルピング | なし |
| タイムフレーム | 5M |
| 開発者 | Bogdan Ion Puscasu |
フォワードテストの分析(2025年12月時点)
15週間で+122%──数字だけ見れば非常に好調
本記事執筆時点(2025年12月初旬)で公開されているフォワードテストでは、Quantum King EAは
およそ15週間で成長率+122%、月間換算の増加率は約+27%と、数字だけ見ればかなり派手なパフォーマンスを記録しています。
最大ドローダウンも15.2%に抑えられており、統計表だけを見ると「リスクの割にリターンが非常に良いEA」に見えます。

トレード回数は122回、そのうち勝ちトレードが約80%、プロフィットファクターは4.70と、
短期フォワードとしては例外的にきれいな右肩上がりの資産曲線です。
ただし、これはあくまで「2025年の限られた期間」における結果であり、
この数字だけで長期的な安全性を判断するのは危険です。
グリッド+マーチンだからこその「短期右肩上がり」
Quantum King EAは、後述するようにグリッド(ナンピン)とマーチンゲールを組み合わせた単純な戦略です。
価格が逆行するたびにポジションを追加し、ロットを増やしながら平均建値を近づけていく設計のため、
相場がある程度レンジ気味に推移している期間であれば、
含み損を抱えながらも最終的にはプラス決済で終わるケースが多くなります。
その結果として、フォワード開始から数カ月程度の短期では、
今回のような非常にきれいな右肩上がりの資産曲線になりやすいのが特徴です。
言い換えると、今のフォワード結果は「この数カ月間はAUDCADの値動きが
グリッド+マーチン戦略にとって都合の良い環境だった」ことを示しているに過ぎず、
ロジックそのものが低リスクという意味ではありません。
最大ドローダウン15.2%に隠れた「一発退場リスク」
現在のフォワードでは最大ドローダウンが15.2%と比較的控えめに見えますが、
グリッド+マーチンを採用している以上、本質的なリスクはかなり高いと見るべきです。
トレンドが長く続いて含み損ポジションが積み上がると、
追加ポジションのロットも雪だるま式に増えていきます。
その結果、ある一点を超えたところで一撃で口座が吹き飛ぶ(もしくは大半を失う)可能性があります。
今回のフォワード期間中は、たまたま大きなトレンドが発生せず、
グリッドがすべて「うまく戻ってくれた」ためにドローダウンが浅く見えているだけであり、
将来も同じように安全とは限りません。
特に、複利運用でロットを増やしながら運用した場合、
資産が増えるほど「一発退場したときの損失額」も急激に大きくなる点には注意が必要です。
入出金の影響も考慮してフォワードを見る
スクリーンショットを見ると、初期入金は100ドルである一方、
その後の入金合計は1,765ドル、出金は1,185ドルと記録されています。
つまり、現在の残高985.45ドルという数字は「入出金を繰り返した結果の残高」であり、
単純に「100ドルが10倍になった」と誤解しないように注意が必要です。
このように、短期フォワードの資産曲線や最終残高は、
グリッド+マーチンEAでは「相場環境」と「入出金のタイミング」に大きく左右されます。
現時点の数字はあくまで参考値と捉え、
長期のバックテストや、より長いフォワード期間での挙動を合わせて評価することが重要です。
バックテスト結果の分析
約20年・AUDCADでのロングラン検証
Quantum King EAのリスクを確認するため、筆者自身の環境でバックテストを行いました。
条件は以下の通りです。
- 期間:2005年1月1日〜2025年11月28日(約20年分のデータ)
- 通貨ペア:AUDCAD
- 初期残高:10,000 USD
- ロットサイズ:固定0.01ロット(マーチンゲールにより増加)
- その他設定:デフォルトのまま
- スプレッド:フローティング
ヒストリークオリティは89%で、完全とは言えないものの、長期傾向を確認するには十分な精度と判断してよいレベルです。


残高曲線はほぼ一直線の右肩上がり
残高グラフを見ると、2005年から2025年までの約20年間、ほぼ一直線に近いきれいな右肩上がりの線が描かれています。
エクイティライン(含み損益)もバランスラインにほぼ重なっており、
一時的に含み損が膨らんで大きく沈み込むような場面はほとんどありません。
下段のDeposit Loadも常に低く、マーチンゲールを使うEAとしては
バックテスト上はかなり控えめな負荷で推移していることが分かります。
20年間のトータル純益は約3,058ドルで、初期残高1万ドルに対して
「ゆっくりだが着実に積み上げる」タイプの結果になっています。
短期間で資産を何倍にもするような爆発力はありませんが、
その代わりロットを抑えた設定では、グラフ上の変動は非常に穏やかです。
最大含み損は約145ドル──ロットと絶対額で見るリスク
今回のバックテストでは、最大のエクイティドローダウン(含み損の最大値)は約144.87ドルでした。
ロットは0.01スタートで、マーチンゲールによって増加するものの、
この条件では「どれだけ逆行しても、含み損は150ドル前後までしか膨らまなかった」という結果です。
残高に対する%で評価すると誤解を生みやすいため、ここでは
ロットサイズと含み損の絶対額に注目します。
0.01ロットで最大含み損約145ドルということは、
グリッドとマーチンのステップ幅・増加率が比較的慎重に抑えられていることを意味します。
同じロジックでも、スタートロットを0.1ロット、1ロットと上げていけば、
最大含み損はそのまま桁違いに膨らみ、簡単に数百〜数千ドルに達します。
バックテストが「安全そうに見える」のは、あくまでスタートロットをかなり低く設定しているからだと理解しておく必要があります。
3,200トレード・勝率約78%のコツコツ型プロファイル
総トレード数は3,202回、うち勝ちトレードは2,488回で、勝率はおよそ77〜78%でした。
プロフィットファクターは3.08、リカバリーファクターは21.11と、
統計値だけ見れば「かなり優秀なコツコツ型EA」と言えます。
個々のトレードを見ると、平均利益は約1.82ドル、平均損失は約2.06ドルと、
1回あたりの損益はそれほど大きくありません。
一方で、最大損失トレードは-14.38ドルで、通常の損切りよりも大きめのロスが発生していることが分かります。
これは、グリッド+マーチンによりポジションを積み増した後、
まとめて決済された局面が反映されていると考えられます。
バックテストから見える「表の顔」と「裏の顔」
今回の設定では、20年バックテストで最大含み損が約145ドルにとどまり、
残高曲線も非常に滑らかな右肩上がりになりました。
この数字だけを見ると「リスクは小さく、ほぼ安心して使えるEA」のように見えます。
しかし、Quantum King EAの本質はあくまでグリッド(ナンピン)とマーチンゲールを組み合わせた単純な戦略です。
今回はスタートロットを0.01に抑えたことで、
マーチンの増加ロットと含み損の絶対額も小さく収まっていますが、
ロットを2倍、5倍と上げていけば、
同じような値動きでも一撃で数百〜数千ドルの含み損を抱える可能性があります。
つまり、このバックテストは「デフォルト設定+超控えめロットなら、過去20年では大きな危機は表面化しなかった」
という結果を示しているに過ぎません。
構造的なリスクそのものは変わらず、ロットの上げ方を間違えると
一発で口座が吹き飛ぶ潜在リスクがある点は、フォワードテスト同様に強く意識しておく必要があります。
トレーディングロジックとリスク特性
基本コンセプト:グリッド+マーチンゲールのシンプル構造
Quantum King EAは、開発者の説明どおりグリッド(ナンピン)とマーチンゲールを組み合わせた非常にシンプルなロジックです。
AUDCAD専用で、一定間隔ごとにポジションを追加しながら平均建値を動かし、
相場が元の方向へ戻ったところで一括決済して利益を取る「コスト平均型」の戦略になっています。
開発者によれば、グリッドの間隔やロットの増加はボラティリティに応じて調整される「アダプティブ・グリッド」で、
トレンドフォローではなくレンジ〜ジグザグ相場での戻りを何度も取ることを想定した設計です。
今回のフォワードでも、そのコンセプトどおり細かい売買を何度も繰り返し、
コツコツと利益を積み上げる挙動が確認できます。

初動エントリーは完全な逆張り
フォワードのトレード履歴をH1チャート上にプロットしてみると、
初動エントリーはほぼ例外なく「逆張り」になっていることがはっきり分かります。
上昇局面では最初のポジションがSell、下落局面では最初のポジションがBuyになっており、
「一方向に伸びたあと、いったん戻るだろう」という前提でポジションを入れている設計です。
その初動が逆行した場合は、価格が進むたびにグリッド幅ごとにポジションを追加し、
ロットを徐々に増やしながら平均建値を現在値に近づけていきます。
チャート上でも、白い矢印(Buy)と赤い矢印(Sell)が階段状・三角形状に並び、
典型的なナンピン+マーチンの動きになっているのが確認できます。

含み損を時間で薄める資金管理
グリッド+マーチンの基本的な考え方は、
「最初のポジションが逆行しても、ポジション数とロットを増やすことで、戻りの幅を小さくして逃げる」
というものです。
Quantum King EAもこの典型的なパターンに従っており、
複数のポジションを束ねたトータル損益がプラスに転じたところで決済し、再び新しいグリッドを組み直します。
このため、チャート上では一時的に含み損を抱えても、
短期的には多くのケースで「最後はまとめて利確して終わる」ように見えます。
実際、今回のバックテストでも、ロットを0.01スタートに抑えた条件では
含み損が大きく沈み込む場面は少なく、きれいな右肩上がりの残高曲線になりました。
一方向に伸びる相場で一気に崩れる構造
一方で、このロジックは一方向に大きく伸びるトレンド相場に非常に弱いという決定的な弱点を持ちます。
初動エントリーが完全な逆張りである以上、トレンドが止まらない限りグリッドは広がり続け、
ロットも増え続けます。
一定のところで反転してくれれば小さな含み損で逃げられますが、
反転せずに走り続けた場合は、ポジション数とロットが膨らみ、含み損の絶対額も一気に跳ね上がることになります。
この構造的リスクは、ロットを上げれば上げるほど顕在化しやすくなります。
今回のテストでは0.01ロットという非常に控えめなサイズだったため、
含み損は最大でも数百ドルに収まりましたが、
同じロジックで0.1ロット、0.2ロットとスタートロットを上げれば、
同じ値動きでも簡単に数千ドル規模の含み損を抱えることになります。
その結果、たった一回の大きなトレンドで口座の大半を失う、あるいは一発で飛ぶ可能性が常に付きまといます。
「短期の右肩上がり」と「長期の生存性」は別物
開発者の説明どおり、Quantum King EAはレンジ気味の相場では非常に高い勝率と滑らかな資産曲線を示します。
しかし、その裏側ではグリッド+マーチンならではの「一発退場リスク」を常に抱えています。
短期のフォワードで右肩上がりになっているからといって、
そのままロットを引き上げたり、長期の放置運用をしたりすると、
どこかのタイミングで大きなトレンドに巻き込まれた瞬間に、これまでの利益を一度に失う可能性があります。
まとめると、Quantum King EAは「短期的には非常に綺麗な右肩上がりを描きやすいが、
構造的にはコツコツドカン型のハイリスクEA」です。
使うかどうかを判断する際は、バックテストの残高曲線だけでなく、
初動が逆張りであること、グリッド+マーチンの挙動であること、
そしてロットを上げたときにどれだけの含み損を許容できるかを冷静に考える必要があります。
総合評価・まとめ
Quantum King EAは、AUDCAD専用のグリッド+マーチンゲールEAとしては、
フォワード・バックテストともに「一見とても優秀」な結果を出している部類です。
ただし、その右肩上がりの資産曲線の裏側には、典型的なコツコツドカン型のリスク構造が隠れています。
ここまでの内容を踏まえて、本EAの特徴と注意点を整理します。
良い点
- 短期フォワードでは、約15週間で+122%と非常にきれいな右肩上がりの成績。
- 今回のバックテスト条件(AUDCAD・約20年・0.01ロット固定)では、残高曲線はほぼ一直線の右肩上がり。
- 最大含み損も約145ドルと小さく、控えめロットであれば過去データ上は「大事故」が表面化していない。
- トレード数が多く、勝率も高いため、短期的には利益が積み上がりやすいコツコツ型のプロファイル。
注意すべき点・リスク
- ロジックは単純なグリッド+マーチンゲールであり、初動エントリーは基本的に完全な逆張り。
- 相場が一方向に走り続けた場合、ポジション数とロットが増え、含み損の絶対額が一気に膨らむ構造。
- 今回は0.01ロットという非常に小さなスタートロットのため含み損が小さく見えているだけで、ロットを上げれば同じ値動きでも簡単に「一発退場」につながり得る。
- フォワードの右肩上がりは「この数カ月の相場環境とロット設定がたまたまハマっている」結果に過ぎず、長期の生存性を保証するものではない。
どんな人向けか
- グリッド+マーチンゲールEAの仕組みと、一発で口座が大きく減るリスクを理解したうえで使える人。
- スタートロットをかなり小さく抑え、「最悪ゼロになっても許容できる資金」で割り切って運用できる人。
- 短期のきれいな右肩上がりに飛びつくのではなく、ロット調整と資金管理を自分でコントロールできる中〜上級者。
総評
Quantum King EAは、「控えめロットで運用している間はとても優等生に見えるが、
ロットを上げたり長期放置すると一発ドカンの潜在リスクがあるEA」と評価します。
フォワードの成績やバックテストのグラフだけを見ると非常に魅力的ですが、
その根底にあるロジックはあくまでグリッド+マーチンゲールです。
導入する場合は、ロットと資金量をどこまで守備的に設定できるかを冷静に考えたうえで、
「いつかはドカンが来るかもしれない」という前提で付き合う必要があります。
実態は、初動を逆張りで入れてグリッド+マーチンゲールで追いかける典型的なコツコツドカン型EAです。0.01ロット運用のバックテストでは最大含み損は約145ドルと小さく見えますが、ロットを上げれば同じ値動きでも一撃で口座が大きく削られる潜在リスクがあります。