EAのモンテカルロ分析の正しい読み方 -「破産確率0%」でも安全と言えない理由

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モンテカルロ分析を公開しているEAって、ちゃんとリスク管理してる=安全ですよね?

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結論:それだけでは安全とは言えません。
モンテカルロ分析(Monte Carlo)は、主に「決済された取引結果」を材料にして、勝ち負け(損益)の順序をランダムに入れ替え最大ドローダウン(MaxDD)など「最悪ケースの幅」を推定する手法です。
ただし、EAのタイプによっては重大なリスクが見えにくい“死角”があるため、「モンテカルロ分析がある=安心」と勘違いしないことが重要です。

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死角って、具体的にどんなところですか?

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初心者が特にハマりやすいのは、この4つです。
① 含み損(Equity DD):含み損で耐えるタイプ(例:ナンピン(グリッド)、マーチン)だと、モンテカルロの表が“安全そう”に見えることがあります。
② 複利運用(可変ロット):ロットが残高で変わると、単純な並べ替えではリスクがズレやすいです。
③ 価格水準の変化:長期で価格スケールが変わると、固定pips前提の評価が歪みます。
④ 連敗の偏り(自己相関):単純なシャッフルだと“連敗のかたまり”が崩れ、現実よりマイルドに見える場合があります。

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じゃあ、モンテカルロ分析って意味ないんですか?

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いいえ、使いどころを守れば有益です。
モンテカルロ分析は、「決済ベースのブレ幅」を見て、ロットサイズ資金計画の目安を作るのに向いています。
ただし実運用では、モンテカルロの結果に加えて含み損(Max Equity DD)証拠金使用率ストップアウト条件などを別でチェックして初めて「安全性の判断」に近づきます。

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結局、どこを見れば「危ないEA」を見抜けますか?

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この記事では、損小利大のブレイクアウトEAと、ナンピン(グリッド)EAを例に、
・モンテカルロ結果の正しい読み方
・“安全そうに見えるのに危ない”パターン
・初心者でも迷わない確認ポイント
を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。

この記事を書いた人

Tetsushi O-nishi

FX市場のシステムトレーダー/MQL5プログラマー/EA(自動売買システム)開発者
2021年からEAの開発を開始。数々の戦略を構築→バックテスト検証し、堅守性(ロバストネス)を重視した開発を行う。
自作EAを10個以上リアルアカウントで運用中。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や助言を目的としたものではありません。FX取引にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断で慎重に行ってください。

この記事の目的(モンテカルロ分析の要点と注意点)

モンテカルロ分析とは、バックテストの取引結果を使って勝ち負け(損益)の順序をランダムに入れ替え
「最悪ケースの幅(ドローダウンや損益のブレ)」を推定する手法です。

ただし、モンテカルロ分析は万能ではありません。特に次のような死角があるため、結果の見た目だけで「安全」と判断するのは危険です。

  • 含み損(Equity DD):含み損で耐えるタイプ(例:ナンピン(グリッド)、マーチン)では、リスクを過小評価しやすい
  • 複利運用(可変ロット):残高に応じてロットが変動すると、単純な並べ替えではリスクの再現が難しい
  • 長期の価格スケール変化:数十年単位で価格水準が変わると、固定pips前提の評価が歪むことがある

この記事では、損小利大のブレイクアウトEA(Gold Crab Robot)と、ナンピン(グリッド)EAを例に、
モンテカルロ結果の正しい読み方と、初心者が見落としやすい注意点(死角)を分かりやすく解説します。

モンテカルロ分析の基本(バックテストの弱点を補う考え方)

バックテストは有用ですが、忘れてはいけないのは「たった1回分の歴史(1つのシナリオ)」にすぎないことです。
同じEAでも、勝ちと負けの順番が変わるだけで、最大ドローダウンや資金の減り方は大きく変わります。

そこで使われるのがモンテカルロ分析(Monte Carlo Analysis)です。過去の取引結果を材料にして勝ち負けの順序をシャッフル(リサンプリング)し、
「起こり得る別の歴史」を大量に生成して、結果のブレ(分布)をチェックします。

モンテカルロ分析で何が分かる?(代表的な4項目)

  • 最大ドローダウン(MaxDD):最悪ケースでどれくらい資金が落ちる可能性があるか
  • 最終損益(Net Profitのレンジ):利益がどの程度ブレるか(良い/悪い振れ幅)
  • 最大連敗(Consecutive Losing Orders):連敗に資金とメンタルが耐えられるか
  • 破産確率(Risk of Ruin):一定の破綻ラインに達する確率の目安

ポイントは、モンテカルロ分析が見ているのは「1回の結果」ではなく、多数の可能性(分布)だということです。
つまり“運が悪い順番”になったときに、どれくらい苦しくなるかを事前に把握しやすくなります。

コンフィデンスレベル(信頼度)とは?初心者向けの読み方

モンテカルロ分析の結果には、しばしば「コンフィデンスレベル(Confidence Level / 信頼度)」が表示されます。
これは簡単に言うと、「どれくらい悲観的(または楽観的)に見るか」の目盛りです。

  • 50%(中央値):真ん中のシナリオ(“平均的な順番”に近い)
  • 90% / 95%:悲観側(資金管理はここを基準にする人が多い)
  • 99%〜:かなり悲観的(保守的だが、現実的に厳しすぎる場合も)

「信頼度95%のMaxDD」という表記があれば、概ね「100回のうち95回は、そのMaxDD以下に収まる想定」という意味合いで使われます(ツールにより表現は多少異なります)。
実務的には、初心者ほど95%などの悲観側を基準にして、ロットサイズや必要資金を決めるのが安全です。運用が壊れるのは「平均」ではなく、悪い順番が続いたときだからです。

実戦での使い方(ロット・資金管理に落とし込む)

  1. 信頼度95%など悲観側のMax %DDを確認する
  2. 自分の許容ドローダウン(例:20%)を決める
  3. 許容DDに収めるために、ロットを落とす(安全側に寄せる)

まとめると、モンテカルロ分析は「良い成績の証明」ではなく、「悪い展開になったときの耐久力(資金管理)を設計する道具」です。
次のセクションから、具体例で「どこをどう読めばいいか」を解説します。

【例1】ブレイクアウトEA(Gold Crab Robot)のモンテカルロ分析

ここでは、損小利大タイプのブレイクアウトEAとして Gold Crab Robotを例に、「バックテスト → モンテカルロ → 実運用の判断」までの読み方を、初心者向けに整理します。

関連記事:ブレイクアウトEAは勝てる?自作EAで検証 – メリット・デメリットと運用のコツ

前提(この例の条件)
ロット固定0.01/初期資金$500/期間2005年1月〜2025年8月(MT5レポート)

1) まずはバックテストを点検(MT5レポートの見方)

モンテカルロ分析を見る前に、バックテストの“生データ”が健全かを確認します。
モンテカルロ分析は基本的に「過去の取引結果の並び替え」なので、元データが歪んでいると結果も信用しにくくなるからです。

Gold Crab RobotのMT5損益曲線(2005年〜2025年)

長期バックテストの損益曲線:右肩上がりでも、途中の停滞期・伸びの偏りがないかを確認します。
Gold Crab RobotのMT5バックテスト統計(PF・DD・取引回数)

MT5統計の要点:PF・DD・取引回数・平均利益/損失など「中身のバランス」を見ます。

主要な指標(抜粋)

  • 総取引回数:2,999回/勝率:40.01%(損小利大型では勝率が高くなくても成立します)
  • PF(Profit Factor):1.45/シャープレシオ:2.37/リカバリーファクター:22.57
  • 最大DD(残高):$179.09(5.08%)/最大DD(含み損・Equity):$192.07(9.26%)
  • 最大連敗:14回(-$43.97)/平均利益:$11.67/平均損失:-$5.38

初心者向け補足
Balance DDは「決済後の残高ベース」、Equity DDは「含み損を含む資産ベース」です。
実運用の“ヒヤッ”は含み損側(Equity)で起きやすいので、両方を見るのが基本です。


2) 信頼度(コンフィデンスレベル)付き結果の読み方

表に並ぶConfidence level(信頼度)は、「どれくらい悲観的に見るか」の目盛りです。
運用が壊れやすいのは「平均」ではなく悪い順番が続いたケースなので、多くのトレーダーは95%行を重視します。

Gold Crab Robotのモンテカルロ結果(信頼度別)

モンテカルロ結果(信頼度別):95%など悲観側の「Max %DD」と「連敗」を基準に、資金・ロットを決めます。

95%の行(重要:この例の読み方)

  • 純利益(Net Profit):約 $4,209.7
  • 最大DD(Max %DD):約 28.63%
  • Ret/DD:14.72
  • 最大連敗(Consecutive Losing Orders):約 20回

ロットサイズの決め方(実用)
基本ルールは、「許容DD ÷(信頼度95%のMax %DD)」です。

  • 許容DD = 20% → ロット乗数 ≈ 20 / 28.63 ≈ 0.70倍
  • 許容DD = 30% → ロット乗数 ≈ 30 / 28.63 ≈ 1.05倍(ただし初心者は1.0倍以下推奨)

モンテカルロ分析は「勝てる証明」ではなく、「壊れにくいロットと資金計画」を作る道具だと捉えると失敗が減ります。


3) モンテカルロチャート(軌跡のばらつき)

チャートは、シャッフルで作った多数のシナリオの資産曲線(軌跡)です。
重要なのは上側(好調な軌跡)ではなく、下側(悲観側)のラインです。

Gold Crab Robotのモンテカルロチャート(複数の資産曲線)

モンテカルロチャート:平均は伸びても、悲観側は深い押し・長い停滞が起こり得ます。ロットは下側基準が安全です。
  • 多くが上昇していても、悲観側には大きな落ち込みが出ることがあります。
  • 実運用のロットは、“下側でも耐えられるか”で決めるのが基本です。

4) 破産確率(Risk of Ruin)は「前提条件」を必ず確認

Risk of Ruin(破産確率)は、設定された破綻ラインに到達する確率の目安です。
ただし、ここで最重要なのは前提条件です(固定ロット前提になりやすい等)。

Gold Crab Robotの破産確率(Risk of Ruin)

破産確率の目安:固定ロット前提の計算になりやすいため、複利・証拠金ルールが変わると再評価が必要です。

例(このモデルの表示)

  • 初期資金$125 → 破産確率 = 3%
  • $250以上 → 0%(この前提では破綻ラインに届きにくい)

⚠️ 注意:この手の結果はロット固定などの前提に強く依存します。
複利運用(可変ロット)や、ブローカーの証拠金・ストップアウト条件を変える場合は、必ず再評価してください。


5) 予測・検証(将来レンジ)は「下限ベース」で使う

Predict/Verifyは、今後の取引回数に対して資産がどの範囲に入りそうかを示す機能です。
ここは未来予言としてではなく、資金計画のレンジとして使うのが安全です。

Gold Crab Robotの予測レンジ(Predict/Verify)

予測レンジ(赤い帯):資金の引き出しや運用計画は「下限(悲観側)」を基準にすると安全です。

実用ルール
資金の引き出し・運用継続の判断は、上振れではなく下限(悲観側)を基準に設計すると事故が減ります。

【例2】ナンピン(グリッド)EAのモンテカルロ分析が“安全そう”に見える死角

次は、ナンピン(グリッド)EAの例です。
グリッド系は、バックテストの損益曲線(Balance)が滑らかでも、含み損(Equity DD)が一時的に大きく膨らみやすいのが特徴です。
このタイプにモンテカルロ分析を当てると、「表やチャートが良く見えるのに、実は危ない」状態が起こりやすくなります。

関連記事:ナンピン(グリッド)EAに騙されるな – 口座破綻の危険性と見分け方【自作EAで検証】

含み損(Equity DD)の急増:モンテカルロ分析が拾いにくい最大リスク

サンプルGrid EAでは、初期資金$10,000/0.01ロット固定にもかかわらず、含み損(Equity DD)が約50%近くまで達する局面がありました。

グリッドEAの損益曲線(BalanceとEquity)

Balanceが緩やかでも、Equity(含み損込み)は大きく沈むことがあります。ここがグリッドEAの本質的リスクです。
グリッドEAのMT5統計(Equity DDが大きい例)

統計の要点:この例ではEquity DDが約49%まで拡大。モンテカルロ分析だけだと危険を見落としやすい典型例です。

重要:モンテカルロ分析は基本的に「決済された取引」を並べ替える手法です。
そのため、グリッドEAで起きやすい「保有中に含み損が膨らむ → 耐えて戻る(または耐えきれず退場)」という局面が、結果に反映されにくくなります。


モンテカルロの数値が“安全寄り”に見える例(破産確率・信頼度テーブル)

グリッドEAは、モンテカルロ分析の表だけを見ると「低DD・破産確率0%」のように見えてしまうことがあります。
しかし結論は1つです。
この数値だけで「安全」と判断してはいけません。

理由は、モンテカルロ分析が基本的に決済済みの損益を並べ替える手法であり、グリッドEAの致命傷になりやすい含み損(Equity DD)・証拠金逼迫が別物として残るからです。

破産確率(Risk of Ruin)が0%でも安心できない(具体例)

下の表は、信頼度95%で集計したRisk of Ruinの一例です。初期資金を$10,000にすると、次のように表示されます。

  • Risk of ruin(破産確率) = 0
  • Max %DD = 2.61%(Max DD = $278.61)
  • Net Profit = $2,377.42(% Net Profit = 23.77%)

数字だけ見ると「DDが2.61%で破産確率0%なら安全そう」に見えます。
しかしこれは“決済損益の並べ替え”の世界の話で、含み損の急増証拠金ルール(ストップアウト)による退場リスクを保証しません。

グリッドEAのRisk of Ruin(信頼度95%の例)

例:初期資金$10,000でも「破産確率0」「Max %DD 2.61%」と表示されることがあります。しかし、含み損・証拠金リスクまで安全を保証するものではありません。

 信頼度95%のMax %DDが小さい=安全ではない(具体例)

次は「信頼度(Confidence level)」別のモンテカルロ結果です。ここでも95%の行が“悲観側の目安”としてよく使われます。
この例では、95%の行で次のように表示されています。

  • Net Profit = $2,377.42
  • Max %DD = 2.61%(Max DD = $278.61)
  • Consecutive Losing Orders(最大連敗) = 7

これも一見「かなり安全」に見えます。
ですが、このMax %DD(2.61%)“決済損益の並べ替えで出たDD”であり、グリッドEAの本当の危険である含み損(Equity)の膨張を反映しにくい点に注意が必要です。

グリッドEAのモンテカルロ結果(信頼度別の例)

信頼度95%でも「Max %DD 2.61%」のように小さく出ることがあります。しかし、含み損(Equity DD)や証拠金逼迫の安全性を保証しません。

“モンテカルロ上は低DD”でも、MT5統計ではEquity DDが約49%(ここが致命点)

初心者が一番勘違いしやすいポイントはここです。
モンテカルロ分析の95%行でMax %DDが2.61%と見えても、MT5の統計では含み損(Equity DD)が別次元になることがあります。

このサンプルGrid EA(初期資金$10,000)のMT5統計では、次のような数値が出ています。

  • Balance DD(相対) = 11.86%($1,366.56)
  • Equity DD(相対) = 49.11%($4,988.57)

つまり、モンテカルロ分析では「最大2.61%DD」と“安全寄り”に見える一方で、実際のバックテスト統計では資産が約半分沈む局面(Equity DD 約49%)が存在します。
この差がある限り、破産確率が0%でも、安全とは判断できません。


モンテカルロチャートが滑らかでも安心しない(下限・別指標が必要)

モンテカルロチャートは、多数のシナリオが重なるため「右肩上がりで安定」に見えやすいです。
ただしグリッドEAの場合、チャートが綺麗でも、含み損・証拠金が原因で途中退場するリスクは残ります。

グリッドEAのモンテカルロチャート(見た目が安定に見える例)

チャートが滑らか=安全ではありません。グリッドEAは含み損(Equity DD)と証拠金が別ルートで膨らむため、見た目だけで判断しないことが重要です。

まとめ:この数値から「安全」と判断すべきでない理由

  • 破産確率0%Max %DD 2.61%は、主に決済損益ベースの評価になりやすい
  • グリッドEAの“事故”は、含み損(Equity DD)証拠金逼迫で起こる(この例ではEquity DD 約49%
  • よって、モンテカルロ分析の表が良く見えても、それだけで安全とは判断できない

最低限セットで確認したい項目
Max Equity DD最大ポジション数証拠金使用率(余剰証拠金)ストップアウト条件MAE(最大含み損)


なぜ結果が「良く」見えるのか(初心者がハマる2つの錯覚)

グリッドEAや利小損大(コツコツドカン)型のモンテカルロ結果は、次のように“優秀”に見えることがあります。

  • 曲線が滑らかで、右肩上がりに見える
  • Max %DDが低く出る(=安全そうに見える)

しかし実際には、次の危険が表から抜け落ちやすいのが問題です。

  • 含み損(Equity Drawdown / MAE)の急増:決済されるまで見えにくい
  • 証拠金リスク(Margin):保有中の必要証拠金・ストップアウト条件が運命を決める
  • 損失の“かたまり”:相場が一方向に伸びると、連続的に苦しくなりやすい

結論:グリッド/マーチン系のEAは、モンテカルロ分析のスクリーンショットだけで安全判断しないことが大切です。
最低でもMax Equity DD証拠金使用率(Margin Level)最大ポジション数ストップアウト条件をセットで確認しましょう。

モンテカルロ分析の限界と対処法(ここを知らないと“安全そう”に騙される)

モンテカルロ分析は、バックテストの取引結果をシャッフルして「決済損益のブレ」を推定する便利な手法です。
ただし万能ではなく、EAのタイプによっては最重要リスクをほとんど測れないケースがあります。

特に注意:
含み損で耐えるタイプ(ナンピン・グリッド)や、利小損大でリスクリワードが低いEAの破綻リスクは、モンテカルロ分析だけでは評価できません。
理由はシンプルで、モンテカルロ分析が主に扱うのは「決済された取引結果」だからです。


1) 含み損(Equity DD)が十分に反映されない

モンテカルロ分析は基本的に決済済み取引の損益(Balance)をリサンプリングします。
そのため、次のような“運用中に起きる危険”を捉えにくいのが欠点です。

  • 含み損(Equity DD)が急増する局面
  • 証拠金逼迫(マージンレベル低下)
  • マージンコール/ストップアウト

対処法(最低限これをやる)

  • Equityベースの指標(Max Equity DD、MAE、証拠金使用率)を別途チェックする
  • バックテストで最大ポジション数最大含み損最悪の証拠金状況を確認する
  • 運用ルールとして停止条件(最大DD・最大ポジション数・証拠金水準)を明確にする

2) 複利運用(可変ロット)には不向き

モンテカルロ分析の多くはロット固定を前提にしています。
残高に応じてロットが変動する(複利運用、リスク%固定など)場合、単純な並べ替えでは将来のリスクを再現しにくいことがあります。

対処法

  • EAのバックテスターで複利ルール込みで直接検証する
  • 必要ならパーセントリターンを材料に再シミュレーションし、後から複利を適用する(前提条件の影響が大きい点に注意)

3) 長期的な価格スケール変化で結果が歪む

長期バックテストでは、銘柄によって価格水準が大きく変化します。
このとき固定pipsの損切り・利確やグリッド幅を前提にすると、過去と現在で“同じpips”の意味が変わり、評価が歪むことがあります。

対処法

  • 固定pipsではなく、パーセントATR(ボラティリティ)倍率で正規化して評価する
  • 長期テストは、複数期間に分けて安定性(崩れやすさ)を確認する

4) 連続性(自己相関)を崩してしまう問題

単純なシャッフルは勝ち負けの順序をバラバラにするため、現実に起きやすい「連敗のかたまり」や相場環境による偏りが崩れます。
その結果、実際よりもマイルドなDDに見えることがあります。

対処法

  • ブロックブートストラップ(例:5〜20取引を1ブロックとして並べ替える)を検討する
  • 相場状況(トレンド/レンジ、高ボラ/低ボラ)を分けた検証も併用する

まとめ:モンテカルロ分析は、決済損益ベースのブレを把握するには有効です。
しかし、含み損で耐えるナンピン・グリッドや、利小損大でRRが低いEAの破綻リスクは、モンテカルロ分析だけでは測れません。
必ずEquity DD・証拠金・MAEなどをセットで確認し、運用ルール(停止条件・監視)まで含めて判断しましょう。

よくある誤解と注意点(モンテカルロ分析で“安全そう”に見える罠)

モンテカルロ分析は便利ですが、読み方を間違えると「安全そうに見えるEA」を選んでしまう原因になります。
ここでは初心者が特にハマりやすい誤解を整理します。

誤解1:滑らかなモンテカルロ曲線(バンド)=安全なEA

結論:滑らかに見えても、安全とは限りません。

特にナンピン(グリッド)/マーチンゲール系は、決済損益が整って見えても、運用中に含み損(Equity DD)証拠金リスクが急増しやすいタイプです。
モンテカルロ分析は主に決済された取引を材料にするため、こうしたリスクを過小評価しがちです。

  • 見るべき指標:BalanceではなくEquity(口座資産)の推移
  • 必須チェック:Max Equity DD/証拠金使用率(Free Margin, Margin Level)/MAE(最大含み損)
  • 要注意EA:「含み損で耐える」設計、利小損大(RRが低い)設計

誤解2:モンテカルロ分析のスクリーンショット=信頼できる証拠

結論:スクリーンショットは“権威付け”に使われることがあります。

モンテカルロ分析の表やチャートは見た目が「プロっぽい」ため、販売ページに貼るだけで安心感を演出できます。
しかし、分析の前提(固定ロット・決済損益ベースなど)が明かされていなければ、結果は簡単に“よく見える”形になります。

本当に信頼できるかは、次のセットで判断してください。

  • フォワードテスト(できれば実口座、少なくとも長期)
  • ロジックの堅牢性(相場環境が変わっても崩れにくい設計か)
  • 過剰最適化を避けている証拠(OOS・ウォークフォワード・パラメータ感度)
  • グリッド/マーチン依存でないか(依存するなら含み損・証拠金の検証が必須)

つまり、モンテカルロ分析は「提示されたから安心」ではなく、「前提と死角を理解して使う」ものです。


結論:モンテカルロ分析は“資金管理の道具”であり、安全証明ではない

モンテカルロ分析は、決済済み取引のブレ(最大DD・連敗・損益レンジなど)を可視化し、ロットサイズ必要資金を決めるための貴重なツールです。

しかし、次の死角があります。

  • 含み損(Equity DD):ナンピン・グリッドなどの本当の危険が表に出にくい
  • 複利運用(可変ロット):固定ロット前提の推定だとズレやすい
  • 長期の価格スケール変化:固定pips前提の評価が歪むことがある

モンテカルロ分析だけを信用してはいけません。
最終的に重要なのは、戦略ロジックの堅牢性と、相場が変わっても退場しにくい運用設計です。
フォワードテストやOOS(期間外)テストで再現性を確認し、カーブフィッティング(過剰最適化)を避け、グリッド/マーチン依存がないか(または依存するなら含み損・証拠金の検証があるか)を必ずチェックしましょう。

関連記事:EAのロバストネス(堅牢性)とは?崩れにくいEAの選び方と購入前チェックリスト

よくある質問(FAQ)

1) モンテカルロ分析は、単一のバックテストと比べて何を測定しますか?
バックテストは、過去の「たった1つの歴史(1本の軌跡)」にすぎません。モンテカルロ分析は、決済された取引結果をリサンプリングして多数の「別の歴史」を作り、最大ドローダウン最終損益連敗破産確率などの分布(ブレ幅)を確認します。最悪ケースの範囲を把握するのに役立ちますが、フォワードテストやOOS(期間外)テストの代わりにはなりません。
2) どの信頼度レベルを使えばいいですか?また、そこからどうやってロットサイズを決めますか?
多くのトレーダーは、より悲観的な想定として信頼度95%(下側バンド)を基準にします。目安は、ロット乗数 ≈ 許容%DD / 最大%DD(95%)です。たとえば最大%DD(95%)が28.63%で、許容DDを20%にしたいなら、乗数は約20 / 28.63 ≈ 0.70倍になります。
3) モンテカルロ分析は、含み損(Equity DD)やマージンコールを考慮しますか?
基本的には考慮しません。標準的なモンテカルロ分析は決済された取引のみを対象とするため、特にナンピン(グリッド)/マーチンゲール系では、運用中に膨らむ含み損(Equity DD)証拠金使用率エクスポージャーを見落とす可能性があります。Max Equity DD、MAE(最大含み損)、証拠金関連の指標は別途チェックし、ブローカーのストップアウト条件も確認してください。
4) モンテカルロ分析の結果を、複利運用(可変ロットサイズ)に使えますか?
注意が必要です。多くのモンテカルロ分析はロット固定を前提にしています。ロットサイズが残高やリスク%ルールで変動する場合、単純な並べ替えではリスクが誤って評価されることがあります。対処としては、パーセントリターンを用いて再シミュレーションし、後から複利を適用する方法(前提に左右されやすい)や、EAのバックテスターで複利ルール込みで直接検証する方法が現実的です。
5) 「破産確率(Risk of Ruin)」は、どのように読めばいいですか?
破産確率は、モデルの前提条件のもとで「一定の損失ライン(破綻ライン)」に達する確率の目安です。特にロットが固定されている場合に意味を持ちやすい指標です。数値が0%に見えても、ロットルール・レバレッジ・証拠金条件を変更する場合は、同じ数字をそのまま信用せず再評価してください。
6) なぜナンピン(グリッド)/マーチンゲール系EAでは、モンテカルロ分析が「安全」に見えることがあるのですか?
決済損益のリサンプリングは、保有中に発生する大きな含み損や、証拠金リスクの集中を反映しにくい一方で、資産曲線を「滑らか」に見せることがあるからです。その結果、Max %DDが小さく見えても、実運用では含み損や証拠金逼迫で退場する可能性が残ります。グリッド/マーチン系では、モンテカルロ表に加えて必ず口座資産(Equity)曲線、浮動DD、証拠金関連指標、ストップアウトレベルを検証してください。
7) 意味のあるモンテカルロ分析には、どれくらいのデータ量が必要ですか?
取引回数が多く、かつ多様な相場状況(トレンド・レンジ・高ボラなど)を含むほど、結果の信頼性は高まります。経験則として、異なる市場環境にわたる数百回以上の取引は欲しいところです。連勝・連敗の偏りや相場状況の影響が重要なら、ブロックブートストラップ(例:5〜20取引を1ブロックとしてリサンプリング)や、相場状況を分けたリサンプリングも検討してください。

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Tetsushi O-nishi

FX市場のシステムトレーダー/MQL5プログラマー/EA(自動売買システム)開発者
2021年からEAの開発を開始。数々の戦略を構築→バックテスト検証し、堅守性(ロバストネス)を重視した開発を行う。自作EAを10個以上リアルアカウントで運用中。

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