
EAの概要
| ロジック概要 | 逆張り |
|---|---|
| マーチンゲール | なし |
| グリッド | なし |
| スキャルピング | なし |
| タイムフレーム | 15M |
| 開発者 | Ihor Otkydach |
フォワードテストの分析(リアル口座の成績)
約11週間で+40%の成長だが、まだ「お試し期間」の段階
Pips Hunterは、PepperstoneUKのリアル口座で約11週間運用され、初期残高2,982ドルに対して現在のエクイティは3,802.61ドル、累計利益は1,199.73ドルと、ざっくり約+40%の成長を記録しています。月次換算の成長率はおよそ+25%前後とかなり高めで、フォワードカーブも今のところきれいな右肩上がりです。ただし、期間はまだ3か月弱と短く、「相性の良いマーケットだけを走っている可能性」を完全には否定できません。

トレード頻度・勝率・期待値のバランス
フォワードテストでは、これまでに237トレードが実行されており、週あたりの平均トレード回数は約18回です。勝ちトレードは177回で勝率は約74.7%、負けトレードは60回(約25.3%)と、高勝率のスキャル〜スイング系EAと言えます。
1トレードあたりの平均利益は+12.32ドル、平均損失は-16.35ドルで、リスクリワードは「勝ちの方がやや小さく、負けの方が大きい」設計です。その一方で、プロフィットファクターは2.22、期待値は1トレードあたり+5ドル強と、現時点では統計的にも優位性が確認できる数字になっています。
ドローダウンと証拠金負荷
ドローダウン面では、残高ベースの最大ドローダウンが約6.1%、エクイティベースでは約13.3%となっています。グラフを見ても、「一撃で口座が大きく沈む」というよりは、数回の連敗が重なったときにじわっと沈み、その後の連勝で取り返している印象です。
一方で、最大デポジットロード(証拠金負荷率)は101.45%と、ピーク時には口座余力をほぼ使い切る場面もあります。複数通貨ペアでポジションが重なった局面では含み損が膨らみやすく、ロット設定を攻めすぎると「普段のDDは浅いのに、たまたまの連敗で大きく削られる」リスクがある点には注意が必要です。
平均保有時間とトレードスタイル
平均保有時間は約17時間と、公称どおり「超短期スキャル」ではなく日内〜1日程度のスイング寄りスキャル型です。ニューヨーク・ロンドン時間帯をまたいでポジションを持ち越すことも多く、短時間に何十回も出入りするタイプではありません。
そのため、スプレッドや約定力はもちろん重要ですが、「ナイトタイムのスプレッド拡大やロールオーバーを含めたブローカー条件」との相性も成績に影響しやすいタイプのEAと考えられます。
通貨ペア別に見る収益の偏り

一方で、EURUSD・CADCHF・EURCHFなど、一部のペアはトレード回数こそ少ないものの損失寄りになっており、「すべての通貨が均等に稼いでいる」というよりは、得意なペアとそうでないペアがはっきりしつつある段階です。長期的に運用するなら、通貨ペア別の損益を定期的にチェックし、パフォーマンスの悪いペアを外すことで、ポートフォリオのリスク・リターンを改善できる余地がありそうです。
現時点でのフォワード評価
フォワードテストだけを見ると、「高勝率かつプロフィットファクターも高く、ドローダウンも比較的抑えられている期待値の高いEA」という第一印象です。ただし、まだ運用開始から数か月のため、ボラティリティが極端に高い局面やリスクオフ相場を十分には経験していない点は無視できません。
総合すると、現時点では「高ポテンシャルだが、まだサンプル期間が短い期待株」という位置づけが妥当でしょう。本格的な資金を投入する前に、小さなロットあるいは検証用口座でしばらくフォワードを継続観察するのが現実的なアプローチだと考えます。
バックテスト結果の分析
検証条件と前提
Pips Hunterについては、フォワードテストがもっとも好調だったAUDCAD単体に絞って、私自身がMT5のストラテジーテスターでバックテストを行いました。条件は以下の通りです。
- 期間:2005年1月1日〜2025年11月28日(約20年分のデータ)
- 通貨ペア:AUDCAD
- 初期残高:10,000 USD
- ロットサイズ:固定0.01ロット
- その他設定:デフォルトのまま
- スプレッド:60ポイント
つまり「フォワードで好調な通貨ペアを、低ロット固定で長期に回したらどうなるか」を確認するテストです。


エクイティカーブ:中盤で大きく沈み、その後は右肩上がり
エクイティカーブを見ると、テスト序盤〜中盤(リーマンショック後から2014年前後)にかけて長い下落・停滞期があります。残高は一時的に大きく削られ、その後ゆっくりと回復し、2020年以降は比較的きれいな右肩上がりに変わっていく形です。
最終的には、初期残高10,000ドルに対してトータル純利益は+2,673.47ドルとなり、約20年回してようやくここまで増える、というペース感です。フォワードで見えているような「短期間で+40%」という伸び方とは対照的で、長期のストレスを含んだ成績が見えてきます。
トレード統計:勝率は高いが、リスクリワードが悪い
バックテスト全体のトレード数は1,790回(ディール数は3,580)。勝ちトレードは1,330回で勝率は約74%、負けトレードは460回と、フォワード同様に高勝率のEAです。
- 総利益(Gross Profit):17,770.76ドル
- 総損失(Gross Loss):-15,097.29ドル
- プロフィットファクター:1.18
- 1トレードあたりの平均利益:+13.36ドル
- 1トレードあたりの平均損失:-32.82ドル
- 最大利益トレード:+101.70ドル
- 最大損失トレード:-288.69ドル
この数字から分かるように、勝率は高い反面、平均損失は平均利益の2倍以上あり、最大損失も最大利益の約3倍に達しています。トータルのプロフィットファクターも1.18とわずかな優位性にとどまり、「コツコツ勝って、ときどき大きく負ける」リスクリワードの悪さがハッキリと表れています。
ドローダウンとリスクを“額”で見る
今回のバックテストでは、ドローダウンをパーセントではなく、ロットとエクイティの絶対額で評価します。
- 最大残高ドローダウン(Balance Drawdown Max):約2,425ドル
- エクイティベースの最大ドローダウン(Equity Drawdown Max):約2,458ドル
- 最大連続損失額:-349.27ドル(2トレード)
- 最大単発損失額:-288.69ドル
- 最大連続利益額:+524.76ドル(13トレード)
ロットが固定0.01ロットとかなり小さいため、金額としては「許容範囲」に見えるかもしれません。しかし、もし実運用で0.1ロットにスケールすると、最大ドローダウンは約10倍の2万ドル規模、0.2ロットなら4万ドル規模まで膨らむ計算になります。フォワードテストの好調さだけを見てロットを上げすぎると、バックテストで経験しているような長期の谷で大きく資金を削られるリスクがあります。
フォワード最良ペアのAUDCADですらPF1.18止まりという事実
ここで重要なのは、このバックテストが「フォワードで最も調子が良いAUDCAD単体」で行われているにもかかわらず、プロフィットファクターが1.18にとどまっていることです。複数通貨をまとめたポートフォリオ運用では、他の通貨ペアの成績が足を引っ張れば、PFはさらに低下する可能性があります。
また、20年という長期間で見たとき、途中には数千ドル単位のドローダウンと、数年単位の停滞期が含まれています。フォワード数か月の滑らかな右肩上がりだけを見てしまうと、この長期リスクは見落としがちです。「勝率の高さ」と「きれいなフォワード曲線」に対して、リスクリワードと長期ドローダウンの重さが見合っているかどうかは、慎重に判断したいポイントと言えるでしょう。
トレーディングロジックとリスク特性
開発者が説明するロジックの概要
Pips Hunterは、開発者によると「M15足専用のインストラデイ・スキャルピング+スイングリバーサル」のハイブリッドEAです。Keltner Channelやボリンジャーバンド、RSI、MACD、Standard Deviationなど複数のインジケーターを組み合わせて、短期的な行き過ぎとボラティリティの変化を検出し、押し目・戻り目を狙ってエントリーする設計とされています。
また、「マーチンゲールやグリッドは使わない」「すべてのポジションにハードSLを置き、ダイナミックなストップロスアルゴリズムで損失を抑える」と説明されています。複数通貨ペアをまとめたポートフォリオで使うことを前提に、Katana / Knife / Razor などのプリセットも用意されています。

チャート上の挙動から見える「逆張り」エントリー
フォワードの取引履歴をチャート上にプロットすると、白い矢印(買い)・赤い矢印(売り)は、短期的な上昇・下落の行き過ぎ局面でエントリーしていることが分かります。上昇が一服した高値付近で売り、急落後の戻り局面で買うなど、明らかにトレンドフォローではなく逆張り系のエントリーが中心です。
また、同じ方向に数本まとまって矢印が並ぶ場面もあり、急落・急騰に対して、タイミングをずらしながら複数回に分けて入っていることが読み取れます。いわゆる細かいグリッドマーチンではないものの、「段階的な押し目買い・戻り売り」を行う逆張りEAという位置づけになります。
グリッドマーチンではないが、損切りは遅め
バックテストの統計やパラメータを見ると、Pips Hunterは「ナンピンやマーチンゲールは使わない」とうたっている一方で、ストップロス幅はかなり広く設定されています。平均利益に対して平均損失が2倍以上になる場面も多く、負けトレード1回で複数回分の勝ちを吐き出す設計です。
つまり、ロットこそ一定でグリッドマーチンではありませんが、逆張りエントリーで含み損をある程度抱えたまま粘り、最終的な損切りは遅めになりがちというリスク構造を持っています。トレンドが強く続いたときには、損切りまでの距離が長いぶん、ドローダウンが一時的に大きく膨らむ可能性があります。
複数ポジション同時保有と証拠金リスク
フォワード履歴のチャートからも分かるように、Pips Hunterは同じ通貨ペアで複数のポジションを同時に持つケースがあります。短期的な逆行が続くと、新規の逆張りエントリーが積み上がり、含み損を抱えた状態でポジション数だけが増える局面もあります。
実際のシグナル統計では最大デポジットロードが100%を超える瞬間もあり、通貨ペアが分散されているとはいえ、タイミングによっては口座資金をかなり使い切る構造です。ロット設定を攻めすぎると、数回の連敗や長めのトレンド局面で証拠金に大きなプレッシャーがかかる点は無視できません。
ロジックとリスク特性から見たまとめ
Pips Hunterは、「高勝率の逆張りEAだが、損切りが遅く、複数ポジションを抱えたときのドローダウンリスクが大きいタイプ」と整理できます。マーチンやグリッドのようにロットを増やしていく危険な構造ではないものの、広めのストップと複数エントリーの組み合わせにより、一度の負けサイクルで想定以上の金額が減る可能性があります。
したがって、運用する際は「フォワードの勝率の高さ」だけではなく、ロットをどこまで抑えるか・何通貨ペアを同時に走らせるかというリスク管理を最優先に考える必要があります。
総合評価・まとめ
このEAの位置づけ
- Pips Hunterは、M15足の逆張りスキャル〜スイング型EA。
- マーチンやグリッドは使わず、固定ロットで複数通貨ペアを分散運用する設計。
- フォワードでは高勝率・きれいな右肩上がりだが、サンプル期間はまだ数か月と短い。
フォワードから見える長所
- リアル口座のフォワードで、現時点では利益カーブが素直に右肩上がり。
- 勝率70%台・プロフィットファクター2前後と、統計的には優位性が感じられる。
- AUDCAD・EURAUD・AUDSGDなど、得意通貨では安定した収益が出ている。
バックテストとロジックから見えるリスク
- 逆張りEAであり、トレンドが続く局面では含み損を抱えやすい。
- グリッドマーチンではないが、損切り幅が広く、損切りは遅めに出る傾向。
- 同方向に複数ポジションを持つことがあり、証拠金負荷が一時的に大きくなる。
- フォワードで好調なAUDCAD単体の20年バックテストでも、プロフィットファクターは1.18程度にとどまり、長い停滞期と数千ドル規模のドローダウンを経験している。
どのように使うべきか
- メイン口座の主力EAというより、「期待値はありそうだが検証中の候補」として扱うのが無難。
- ロットはできるだけ小さく設定し、同時運用する通貨ペア数も絞ってスタートする。
- フォワードとバックテストの差(特にドローダウンの深さ)を意識しながら、一定期間はデモ口座または小額リアルで様子を見る。
- 通貨ペア別の損益を定期的に確認し、成績の悪いペアを外すなどポートフォリオを調整していく。
総評
現時点の印象としては、「高勝率でポテンシャルは高いが、逆張り特有の大きな損切りと長期ドローダウンを内包したEA」です。
フォワード数か月だけを見ると非常に魅力的ですが、20年バックテストの結果を踏まえると、
ロット管理と通貨ペアの絞り込みを徹底しない限り、大きな資金でいきなり本番投入するのはリスクが高いと言えます。
まずは小さなサイズでフォワード検証を続けながら、本当に自分のリスク許容度に合うEAかどうかを見極めるのが現実的な選択肢でしょう。
逆張り型でマーチンやグリッドは使いませんが、ストップロスは広く損切りは遅めです。同方向に複数ポジションを抱えることもあり、強いトレンドに捕まると含み損とエクイティドローダウンが一時的に大きくなりやすいEAです。