EAの概要

マーチンゲール なし
グリッド あり
スキャルピング なし
通貨ペア XAUUSD
タイムフレーム 4H
開発者 Thi Ngoc Tram Le

各項目の評価とコメント

リスク構造・破綻耐性 スコア 1 / 35

典型的なグリッド+マーチンEAで、グリッド幅もかなり狭い高リスク設計です。0.01ロット固定でも最大で約5,500ドルのエクイティドローダウンが発生しており、ロットを上げれば一度の逆行で口座が吹き飛んでもおかしくありません。「いつか大きくやられる」前提の危険寄りEAです。

フォワード信頼性 スコア 4 / 25

公式シグナルでは、約11週間で100ドル口座が2,000ドル超まで増えており、見た目の成績は非常に優秀です。しかし同時にエクイティドローダウンはすでに65%超に達しており、短期の右肩上がりはグリッド+ナンピンEAとしては「むしろ当たり前」の挙動です。現時点では長期の信頼性を判断できる材料にはなりません。

収益性・期待値 スコア 3 / 20

20年バックテストでは約5,385ドルの純利益、PF2.17、勝率7割後半と、数字上の利益ポテンシャルは悪くありません。ただし同じ期間に数千ドル規模の含み損を何度も抱えており、「口座が生き残っていること」が利益の大前提です。ハイリターンと引き換えに、大きなドローダウンを受け入れる覚悟が必要です。

再現性 スコア 2 / 10

XAUUSD専用・MT5標準のグリッドロジックなので、外部APIなどに依存しない点は再現性の面でプラスです。一方でゴールドはスプレッドや約定品質の影響が大きく、ブローカーや口座タイプによっては成績が大きく悪化し得ます。必ず自分のブローカー条件でバックテストとデモ検証を行うことが前提のEAです。

検証プロセス スコア 1 / 10

筆者が2005〜2025年のバックテストとフォワード取引履歴のチャートを確認した結果、開発者の説明どおり「高リスクのグリッド+マーチンEA」であることが裏付けられました。開発者はハイリスク前提・サイクル運用を正直に説明していますが、MQL5のページだけではドローダウンの深さが見えにくい点には注意が必要です。公開情報を鵜呑みにせず、自分自身で長期検証を行ったうえで判断すべきEAだと考えます。

フォワードテストの分析(2025年12月時点)

MQL5 Signal Page(ABS GoldGrid HighRisk Small System)

11週間で残高10倍超えの「理想的すぎる」右肩上がり

ABS GoldGridは、公式シグナル「ABS GoldGrid HighRisk Small System」でフォワードテストが公開されています。
2025年12月時点では、初期残高100ドルの口座が、出金を挟みつつもエクイティベースで約2,300ドルまで増加し、
グラフだけを見ると非常にきれいな右肩上がりになっています。
トレード回数はまだ100件弱ですが、勝率はおよそ95%・プロフィットファクターも二桁と、数字だけを見ると
「短期間で資金を何倍にもしてくれる夢のEA」に見えるかもしれません。

ABS GoldGrid HighRisk Small Systemのフォワードテスト統計(11週間・残高10倍超)
ABS GoldGrid HighRisk Small Systemのフォワードテスト(2025年12月時点)。初期残高100ドルが約2,300ドルまで増加している一方で、エクイティ最大ドローダウンは65%超と非常に大きい。

ただのグリッド&ナンピンEAだからこそ起きる数字のマジック

しかし、このEAの正体は典型的なグリッド+ナンピン(マーチンゲール)型のゴールドEAです。
負けトレードの頻度を極端に減らす代わりに、含み損を抱えたポジションをナンピンで耐え続け、
最後にまとめて決済する設計になっているため、フォワードの序盤は勝率もPFも異常に良く見えるのが特徴です。
実際、統計を見ると、勝ちトレードの損益は小刻みに積み上がる一方で、負けトレードは少ない代わりに金額が大きく、
「コツコツ勝ってドカンと負ける」パターンをいつでも抱えていることが分かります。

エクイティ・ドローダウンは最大65%超え──1発で口座が吹き飛ぶリスク

フォワード画面では、バランスのドローダウンは一見小さく見えますが、エクイティ(含み損を含めた実質残高)の
最大ドローダウンは65%超えという非常に危険な水準に達しています。
これは「たまたまポジションを閉じ切れたから今は生き残っているだけ」であり、
相場環境が少し噛み合わなかったり、ロットや入金額を欲張ったりすれば、
1回の悪い相場で口座が一撃で吹き飛んでもおかしくないことを意味します。

短期フォワードが右肩上がりなのは、むしろ“当たり前”

グリッド&ナンピンEAの場合、テスト開始からしばらくは「負けがほとんど出ない」ため、
数週間〜数か月だけ切り取ると、どのEAでも似たような右肩上がりのグラフになります。
そのため、わずか11週間のフォワードで右肩上がりだから安心、という判断はまったくできません
むしろ、このタイプのEAでは、相場が大きく崩れたときにどこまで耐えられるか
「最悪ケースでどれくらいの頻度で口座が飛ぶか」を長期バックテストで確認することが重要です。

現時点のフォワードから読み取れること・読み取れないこと

  • 読み取れること:グリッド&ナンピン設計がうまくハマれば、短期間で口座を何倍にも増やせる爆発力がある。
  • 読み取れること:その裏では、エクイティベースで半分以上のドローダウンを許容するような、極めて高いリスクを取っている。
  • 読み取れないこと:急落相場や長期レンジ崩壊が来たときに、この戦略がどの程度の頻度で破綻するのか。
  • 読み取れないこと:数年単位で見たときに、トータルで本当にプラスを維持できるのかどうか。

つまり、2025年12月時点のフォワードだけを見ると「短期的には非常に強力だが、そのぶん口座破綻リスクも極端に高いEA」
という評価になります。次のセクションでは、長期バックテストの結果から、このリスクがどの程度現実的なのかを掘り下げていきます。

バックテスト結果の分析(2005年〜2025年)

約20年分のデータで検証したバックテスト条件

フォワード成績だけではこのEAの本当のリスクは見えてこないため、私自身の環境でバックテストを行いました。
条件は以下の通りです(2025年12月時点の検証内容です)。

  • 期間:2005年1月1日〜2025年11月28日(約20年分)
  • 通貨ペア:XAUUSD
  • 初期残高:10,000ドル
  • ロットサイズ:固定0.01ロット
  • その他のパラメータ:すべてデフォルト設定
  • スプレッド:30ポイント
ABS GoldGridのバックテスト損益カーブ(2005年〜2025年、XAUUSD 0.01ロット)
ABS GoldGridをXAUUSDで約20年バックテストした損益カーブ。残高は右肩上がりだが、途中でエクイティが数千ドル単位で急落している局面が複数回発生している。
ABS GoldGridバックテストの詳細統計(総取引数3,985と最大エクイティドローダウン約5,500ドル)
ABS GoldGridのバックテストレポート。総取引数は3,985回、プロフィットファクターは2.17だが、最大エクイティドローダウンは約5,500ドルと、0.01ロット運用としては極めて大きい。に大きい。

損益カーブは右肩上がり、トータルでは約5,300ドルの利益

結果だけ見ると、損益カーブはおおむね右肩上がりで、初期残高10,000ドルに対して
最終的な純利益は約5,385ドルとなりました。
総取引回数は3,985回と十分なサンプル数があり、プロフィットファクターは2.17、
勝率も7割後半と、数値だけを切り取れば一見「安定して利益を積み上げているEA」に見えます。

しかし、グラフをよく見ると途中に何度か大きなドローダウンの谷があり、
バランス(残高)はなだらかに伸びている一方で、エクイティ(含み損を含む実際の口座価値)が
大きく沈み込んでいる局面が存在します。これはグリッド&ナンピン特有の「含み損を抱えながら耐える」挙動です。

0.01ロットにもかかわらず、最大で約5,500ドルのエクイティドローダウン

今回のバックテストで最も重要なのはエクイティドローダウンの絶対値です。
0.01ロットという最低レベルのロット設定にもかかわらず、
バックテスト中に記録された最大エクイティドローダウンは約5,500ドルに達しています。
これは、10,000ドルスタートの口座で一時的に半分近い資金が吹き飛んでいることを意味します。

また、最大連敗は49回、その間の合計損失は約1,550ドルでした。
0.01ロットでここまで損失が積み上がるということは、
ロットを0.05ロット、0.1ロットと上げていけば、
同じような相場が来たときに一撃で数万ドル単位のドローダウンが発生しうるということです。

つまり、このEAは:

  • 最小ロットでも数千ドル単位のエクイティドローダウンが発生する設計である
  • ロットを上げれば、そのままドローダウン額も比例して膨れ上がる
  • 「資金が多ければ安全」ではなく、「どれだけ大きな含み損に耐える覚悟があるか」の世界

という、非常に攻撃的で危険なリスク構造を持ったEAだと分かります。

バックテストから見える「運よく生き残っているだけ」の危うさ

約20年のバックテストでは最終的に利益で終わっているものの、
途中には口座の大半が削られてもおかしくないレベルの含み損を何度も抱えています。
今回はたまたま相場が戻ってくれたためにプラスで終わっていますが、
同じ規模のトレンドがもう一歩深く進行していたり、
スプレッドや約定条件が少し悪かっただけでも、簡単に破綻していた可能性があると言えます。

特に注意したいのは、今回の検証はあくまで
「0.01ロット+10,000ドル」というかなり控えめな設定だという点です。
実際の運用で「もっと効率よく増やしたいから」とロットを上げた場合、
バックテストで見えている数千ドル単位のエクイティドローダウンが、そのまま数万ドル規模に拡大することになります。

以上から、このEAはバックテスト上では長期的に利益を出しているものの、
ロットを少しでも間違えると一発で口座が吹き飛ぶ危険な設計であることが確認できました。
次のセクションでは、この挙動を生み出しているグリッド&ナンピンのトレーディングロジックと
リスク特性について、もう少し掘り下げていきます。

トレーディングロジックとリスク特性

典型的なグリッドEA──しかもグリッド幅はかなり狭い

ABS GoldGridは、開発者自身が「グリッド+マーチン戦略のゴールド専用EA」であると明言している通り、
典型的なグリッド型のナンピンEAです。
チャート上の取引履歴を見ると、価格が下落する局面で次々と買いポジションを追加し、
ある程度戻ったタイミングでまとめて決済しています。
1本1本のエントリー間隔(グリッド幅)はかなり狭く、
小さな値動きの中でもすぐにポジションが積み上がっていく設計になっています。

ABS GoldGridのM1チャートに表示された狭いグリッド幅での買い下がりエントリー履歴
ABS GoldGridのフォワード取引履歴をM1チャートにプロットしたもの。価格下落に対して狭い間隔でBuyポジションを追加し、反発でまとめて決済する典型的なグリッド&ナンピンの挙動が確認できる。

M1チャートで見る「買い下がり」の挙動

M1チャートにフォワードの取引履歴をプロットすると、
短時間の下落の中でほぼ同じロットサイズのBuy注文が階段状に追加されているのが分かります。
価格が落ちるたびに新しい買いポジションを建て、反発したときに複数ポジションをまとめて利確する──
グリッド&ナンピンEAの教科書のような動きです。
このとき含み損は一時的に大きく膨らみますが、相場が戻れば一気に解消されるため、
履歴上は「小さな勝ちが連続するきれいな損益カーブ」になりやすい点が、このタイプのEAの特徴です。

H1チャートではトレンドに沿ったロング偏重の運用

H1チャートを見ると、上昇トレンドに沿ってロングポジションを中心に細かくエントリーしている様子が確認できます。
価格が押し目をつけるたびに買い増しを行い、上方向に伸びたところでポジション群を決済することで、
トレンドフォローとグリッドを組み合わせたような収益パターンになっています。
一方で、ゴールドが大きく崩れた場合には、下落に逆らって買い下がり続ける形になるため、
含み損とポジション数が一気に膨れ上がるリスクを常に抱えています。

ABS GoldGridのH1チャートに表示されたトレンド方向へのロングエントリー履歴
ABS GoldGridのフォワード取引履歴をH1チャートに表示した画面。上昇トレンドに沿ってロングポジションを積み増しし、押し目で買い増ししながら戻りで決済するパターンが見て取れる。

開発者が説明しているコンセプト(攻撃的なスキャル&サイクル運用)

開発者の説明を整理すると、このEAは次のようなコンセプトで作られています。

  • ゴールド専用の攻撃的なスキャルピングボットであることを前提にしている
  • グリッド+マーチンで短期間に高いリターンを狙う設計であり、「安全なシステムではない」と明言している
  • 固定ロットとオートロット(口座残高に応じたロット自動調整)が選択可能
  • 最大許容ドローダウンなど、リスクを一定範囲で制限するためのパラメータは用意されているが、根本的なロジックは高リスク
  • +20〜25%の利益が出たら出金してサイクルを区切り、口座をリセットしながら回転させる「サイクル運用」を推奨

つまり、開発者自身も長期・低リスクの安定運用を目指すEAではなく、短期の高リスク運用前提だと明確に位置付けています。

リスク特性:含み損を抱えて耐える設計ゆえの「一発退場リスク」

このEAの最大の問題は、含み損を抱えながら耐える前提で設計されている点です。
グリッド幅が狭いため、相場が逆行すると短時間で多くのポジションが積み上がり、
ロットを上げて運用すれば、ほんの数十ドルの値動きでも口座全体に致命的なダメージが出かねません。
バックテストでも、最小ロットの0.01ロットで運用しているにもかかわらず、
一時的に数千ドル単位の含み損を抱える場面が複数回確認されています。

フォワードやバックテストの損益カーブはきれいな右肩上がりに見えますが、
その裏側では常に「相場がもう一歩踏み込んだ瞬間に口座が吹き飛ぶかもしれない」状態で走っている、
典型的なグリッド&ナンピンEAと言えます。
この性質を理解したうえで、失ってもよい少額資金を、サイクル単位で回転させるハイリスク運用に割り切れるかどうかが、
このEAを使うかどうかの判断ポイントになるでしょう。

総合評価・まとめ

ABS GoldGridは、フォワード・バックテストともにグラフだけを見ると非常にきれいな右肩上がりを描きますが、
その裏側では典型的なグリッド+ナンピンEAらしい、口座を一発で吹き飛ばしかねないリスクを常に抱えています。
2025年12月時点の情報を整理すると、評価は次のようになります。

このEAから読み取れるポイント

  • フォワードでは短期間で口座残高が何倍にも増えており、爆発力は非常に大きい。
  • ロジックは狭いグリッド幅での買い下がりナンピンが中心で、トレンドが続く局面では効率よく利益を積み上げる。
  • 約20年のバックテストでもトータルでは利益が出ているが、その途中で数千ドル単位の含み損を抱える場面が複数回ある。
  • 最小ロットの0.01ロットでこの規模のドローダウンが出ているため、ロットを上げれば損失額もほぼ比例して膨れ上がる。
  • 開発者自身も「安全なシステムではなく、高リスク前提。利益が出たらこまめに出金してサイクル運用を」と説明している。

向いている人・向いていない人

  • 向いている人:
    ・失ってもよい少額資金を、高リスクで短期に回したいトレーダー。
    ・グリッド&ナンピン特有の「いつか大きくやられる」リスクを理解したうえで、それでも試してみたい人。
  • 向いていない人:
    ・長期的な安定運用や、資産防衛を重視するトレーダー。
    ・口座破綻リスクに耐えられない人、メンタル的に含み損を抱えるのが苦手な人。
    ・EA任せで放置運用したい初心者トレーダー。

総評

ABS GoldGridは、うまくハマれば短期間で大きな利益を狙える一方で、
相場の崩れ方次第では一度のドローダウンで口座がほぼ壊滅してもおかしくない、極めて攻撃的なEAです。
「バックテストもフォワードも右肩上がりだから安全」と判断してしまうと危険であり、
あくまでハイリスクギャンブル枠のEAとして捉えるのが現実的です。
個人的には、大きな資金を任せるEAではなく、リスクを十分理解したうえで、
遊び資金の一部で試すかどうかを検討するレベルのEAだと考えています。

Author of this article

Tetsushi O-nishi

FX市場のシステムトレーダー/MQL5プログラマー/EA(自動売買システム)開発者
2021年からEAの開発を開始。数々の戦略を構築→バックテスト検証し、堅守性(ロバストネス)を重視した開発を行う。自作EAを10個以上リアルアカウントで運用中。

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