
EAの概要
| ロジック概要 | トレンドフォロー |
|---|---|
| マーチンゲール | なし |
| グリッド | なし |
| スキャルピング | なし |
| 通貨ペア | GBPUSD |
| タイムフレーム | 1H |
| 開発者 | Bogdan Ion Puscasu |
フォワードテストの分析(2025年12月時点)
公式シグナルの概要と成長率
執筆時点(2025年12月)で、Quantum Emperor MT5の公式シグナルは約14週間の運用実績があります。
初期証拠金は250ドル、追加入金と出金を繰り返しながら、現在のエクイティは約1,083ドル、累計利益は約404ドル、トータル成長率はおよそ+93%と表示されています。
トレード回数は308回、週あたりの平均トレード数は32回前後、平均保有時間は約18時間と「スキャルピング」というよりはH1ベースのスイング寄りの売買スタイルです。
月次成長率は約+11%、年率換算では約+134%と、数字だけ見ればかなり魅力的なフォワード成績に見えます。

勝率は高いがリスクリワードは悪い構造
フォワード成績の統計を見ると、勝ちトレードは272回(約88%)、負けトレードは36回(約12%)と非常に高い勝率を記録しています。
一方で、1トレードあたりの平均利益は+2.49ドル、平均損失は-7.55ドルで、リスクリワードはおおよそ「1:3」程度とかなり悪い設計です。
損小利大ではなく、典型的な「利小損大」型で、少額の勝ちを積み重ねて、ときどき大きめの負けを受け入れるスタイルになっています。
このため、プロフィットファクターは2.49と高いものの、それは主に「勝率の高さ」によって支えられており、1回の損切りが複数回分の利益をまとめて吐き出すリスクを常に抱えていると言えます。
ドローダウンと証拠金使用率から見るリスク
ドローダウンの指標を見ると、バランスベースの最大ドローダウンは約9.3%(約50ドル)と比較的控えめですが、エクイティベースの最大ドローダウンは約28.7%(約372ドル)まで達しています。
また、最大デポジット負荷(Max deposit load)は12.59%と、証拠金使用率自体はそこまで極端ではないものの、含み損が膨らんだ局面ではエクイティの落ち込みが大きくなることがわかります。
「証拠金はそれほど使っていないのに、エクイティ上では3割近いドローダウンが出ている」という点は、このEAのリスク構造を理解するうえで重要なポイントです。
ロットを上げて運用したり、プロップファームの厳しいドローダウンルールで運用する場合には、単発または短期的な連敗が口座全体に与えるダメージを慎重に見積もる必要があります。
現時点でのフォワード評価:数字は優秀だが期間はまだ短い
ここまでの統計だけを見ると、勝率約88%、PF2.49、成長率+93%、月次+11%と非常に優秀なフォワード成績に見えます。
しかし、運用期間はまだ約14週間と短く、しかも途中で何度も入出金が行われているため、「長期的にも同じような成績が続くのか」「大きなトレンド変動局面でどの程度までドローダウンが悪化するのか」は、現時点では判断できません。
執筆時点では、「高勝率だがリスクリワードの悪いEAが、たまたまここ数か月はうまくハマっている可能性」も十分に考慮すべきです。
このため、本記事ではあくまで「2025年12月時点の暫定的な評価」としてフォワード成績を位置づけ、次のセクションで20年規模のバックテスト結果とあわせて、より長期的なリスク・リターンバランスを検証していきます。
バックテスト結果の分析
検証条件とテスト環境
本記事では、公式フォワードだけでなく長期的なリスクを確認するために、私自身の環境でバックテストを行いました。
テスト条件は以下の通りです。
- 期間:2005年1月1日〜2025年11月28日(約20年分のデータ)
- 通貨ペア:GBPUSD
- 初期残高:10,000USD
- ロットサイズ:固定0.01ロット
- その他設定:デフォルトのまま
- スプレッド:10ポイント
ヒストリー品質は99%と表示されており、データ品質そのものは十分に高い状態で検証できています。


トレードが実際に始まるのは2015年から
テスト期間は2005年スタートに設定しているにもかかわらず、実際にトレードが発生し始めるのは2015年以降です。
グラフを見る限り、2005〜2014年の約10年間はほとんどエントリーがなく、実質的には「2015年以降の約10年分」だけでバックテストが行われている状態です。
EA側でトレード開始日を指定している、あるいは特定の期間だけでしかロジックが機能しないように設計されている可能性が高く、都合の悪い相場局面が意図的に除外されている懸念は否めません。
本来であれば、2008年のリーマンショックやポンド危機、コロナショックなど、過去の急変動局面をすべて含めたうえでロジックの耐久性を評価したいところですが、このバックテスト結果だけではそこが十分に確認できません。
利益額とトレード統計の概要
今回のバックテストでは、初期残高10,000ドルに対して、最終的な純利益は約840ドル程度という結果になりました。
トレード回数は3,128回と十分な数がある一方で、「約10年で+840ドル(0.01ロット固定)」というのは、率直に言ってパフォーマンスとしては物足りない印象です。
統計値を細かく見ると、勝ちトレードは全体の9割以上を占めており、フォワードと同様に非常に高い勝率を維持している一方で、
- 平均利益:約+1ドル前後
- 平均損失:約-10ドル前後
というように、1回の負けで複数回分の勝ちを打ち消してしまう「リスクリワードの悪さ」が顕著です。
プロフィットファクター自体は1.34とプラスではあるものの、これは高勝率によってかろうじて成り立っている数字であり、ロットを上げた運用にそのまま適用するのはかなり慎重になるべきだと感じました。
エクイティドローダウンの絶対値から見るリスク
残高ベースのドローダウンは最大でも約150ドル前後にとどまっていますが、一方でエクイティ(含み損を反映した口座価値)の最大ドローダウンは約250ドル程度まで落ち込んでいます。
グラフを見ると、青い残高線は比較的なめらかに右肩上がりで推移しているのに対し、緑色のエクイティはところどころ大きく縦に突き刺さるような下落を繰り返しており、「含み損を抱えたまま時間をかけて回復を待つ」トレードが多いことがわかります。
残高とロットサイズに依存するパーセンテージ表記ではなく、ロット0.01でエクイティが250ドル前後沈んでいる、という絶対値の感覚で見ると、ロットを上げた運用ではこの数字がそのまま数倍になって跳ね返ってくる点に注意が必要です。
バックテスト結果から見えるリスクと限界
まとめると、このバックテストから読み取れるのは次のようなポイントです。
- 2005年からテストしているにもかかわらず、実際のトレードは2015年以降しか行われておらず、検証期間が事実上「半分」に狭められている。
- 約10年間・0.01ロット固定で+840ドルという成績は、リスクを取っているわりにリターンが小さく、優秀なバックテストとは言いがたい。
- エクイティのドローダウンは度々深く沈んでおり、含み損を長く抱える高リスクなトレードスタイルであることがグラフからもはっきりとわかる。
フォワード成績は現時点で悪くないものの、このバックテスト結果だけを見ると「長期にわたって安定して資産を増やしてくれるEA」という印象には届きません。
特に、トレード開始時期を実質的に絞り込んでいる点と、リスクリワードの悪さに対してエクイティドローダウンが比較的重い点は、今後の運用で最も警戒すべきリスク要因と言えるでしょう。
トレーディングロジックとリスク特性
トレンド方向に仕掛ける「分割エントリー」型
Quantum Emperor MT5は、開発者の説明によると「グリッドもマーチンゲールも使わない」トレンドフォロー型EAです。
基本的にはH1チャートでトレンド方向にエントリーし、1回のシグナルを複数の小さなポジションに分割して発注します。
フォワードの取引履歴チャートを見ると、白い矢印がBuy、赤い矢印がSellで表示されており、同じ価格帯で0.02ロット前後のポジションが連続して建てられている様子が確認できます。
この「一度に複数ポジションをオープンする」構造により、相場が想定通りに動いた場合には、小さな利益を何度も積み重ねることができます。

利小損大のコツコツドカン型リスク構造
開発者は「ノーグリッド・ノーマーチン」を強調していますが、実際のトレード履歴を見ると、リスク構造としては典型的な「利小損大のコツコツドカン」に分類できます。
Buy・Sellともに利確は比較的早く、数十pips程度でクローズされる小さな勝ちトレードが連続しますが、逆行したポジションはすぐには切らず、長時間ホールドし続ける傾向があります。
チャート上でも、短い矢印で小さな利確が積み重なる一方、含み損側のポジションは長い直線で結ばれており、価格が戻るまで何十本ものバーをまたいで保持されている場面が目立ちます。
このため、勝率は高いものの、ひとたび大きく逆行すると「1回の損切りで多数の小さな利益を吐き出す」トレードが時折発生します。

グリッド/マーチンではないが、含み損を抱えやすい設計
ロットサイズは基本的に一定であり、価格が下がるたびにロットを倍々に増やすようなクラシックなマーチンゲールではありません。
また、一定間隔で無制限にポジションを積み上げていく「グリッドEA」とも異なり、エントリーはあくまでトレンド方向のシグナルに基づいて行われます。
しかし、実際の挙動としては「トレンド方向に分割で乗り、逆行すればそのポジションを長期間抱えたまま、後続のトレード利益で少しずつ処理していく」スタイルになっており、含み損が膨らみやすい設計であることは否めません。
エクイティカーブに見られる大きな下振れは、こうした“損切りの遅さ”と“ポジションの長期ホールド”に起因していると考えられます。
まとめ:高勝率だが、時間を味方につけるハイリスク構造
総じて、Quantum Emperor MT5は「トレンド方向に分割エントリー → 小さな利確を積み上げる一方で、逆行したポジションは長くホールドする」というロジックで動くEAです。
グリッドやマーチンのようにロットを雪だるま式に増やすわけではありませんが、利小損大のコツコツドカン型であり、エクイティのドローダウンは決して軽くありません。
ロットを上げて運用するほど、たまに訪れる大きな損切りの一撃が口座に与えるダメージも増えるため、「高勝率であること」と「リスクの大きさ」をセットで理解したうえで使う必要があるEAと言えるでしょう。
総合評価・まとめ
Quantum Emperor MT5は、「グリッドやマーチンではないものの、高勝率・利小損大・含み損を抱えやすい」タイプのEAです。
フォワード成績だけを見ると魅力的に見えますが、長期バックテストやトレード履歴を詳しく見ると、リスク面で無視できないポイントが多く存在します。
本記事で分かったポイントの整理
- 公式フォワードでは約14週間で+90%超の成長、勝率約88%、PF2.4台と数字は非常に優秀。
- ただし、月次+10%前後の成長は「利小損大+高勝率」によって支えられており、たまの大きな損切りで利益をまとめて吐き出すコツコツドカン型のリスク構造。
- 検証用バックテストでは、2005年からテストしても実際のトレードは2015年以降しか行われず、都合の悪い相場局面が除外されている可能性が高い。
- 0.01ロット固定・約10年のバックテストで純利益は約840ドルと、リスクを取っている割にはリターンが物足りない。
- 残高カーブは滑らかでも、エクイティはときどき大きく沈み、含み損を長期間抱える場面が頻繁に発生している。
- トレンド方向に分割エントリーするロジックだが、利確は早く、損切りは遅く、時間を味方にして逃げる形になりやすい。
どんなトレーダーに向いているか/向いていないか
- 向いている人:
小ロット・少額資金で、短〜中期のフォワード検証を楽しみつつ「高勝率のトレードスタイル」を試してみたい人。 - 向いていない人:
・エクイティの大きなドローダウンに耐えられない人
・プロップファームの厳しいDDルールで運用したい人
・長期的に堅実な資産形成を目指す低リスク運用を重視する人
現時点での結論(2025年12月時点)
現時点のフォワードだけを見れば「かなり優秀に見えるEA」ですが、長期バックテストの結果やエクイティドローダウンの深さを踏まえると、大きな資金を預けて長期運用するEAとしては慎重な評価が妥当だと感じます。
どうしても使う場合は、あくまでロットを抑えたサブ口座や検証用口座で様子を見る程度にとどめ、口座全体をこのEAに依存しないリスク管理が必須です。
今後のフォワード推移しだいで評価が変わる可能性はありますが、2025年12月時点では「高勝率だがリスクもそれなりに重い、好みが分かれるEA」という位置づけでまとめておきたいと思います。
グリッドやマーチンは使いませんが、高勝率・利小損大・含み損を長く抱えるコツコツドカン型です。0.01ロットでもエクイティの沈み込みは大きく、ロットを上げると一度の損切りが口座に重くのしかかります。短期の勝率に安心してロットを上げすぎると危険なタイプのEAです。