AI Gold Trading MT5 EA レビュー|高勝率だがリスクリワードが悪いスキャル戦略を検証

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EAの概要

ロジック概要 ブレイクアウト
マーチンゲール なし
グリッド なし
スキャルピング あり
通貨ペア XAUUSD
タイムフレーム 1H
開発者 Ho Tuan Thang

各項目の評価とコメント

リスク構造・破綻耐性 スコア 12 / 35

ナンピンやグリッドは使わないものの、ストップロスが広くリスクリワードが極端に悪いEAです。0.01ロットでも1回の負けが十数回分の勝ちを帳消しにする設計で、ロットを上げれば一撃で口座に大きなダメージを与えかねません。「コツコツドカン型」のリスクを十分理解できる人向けです。

フォワード信頼性 スコア 7 / 25

フォワードでは、トレンドが素直に出た局面ではうまく波に乗れており、小さな利確を積み上げる動きが確認できます。一方で、ダマシのブレイクに巻き込まれたときは大きな損切りとなり、短期間でも利益が一気に削られる場面があります。現時点では「相場次第で良くも悪くも振れやすいスキャルEA」という評価にとどまります。

収益性・期待値 スコア 4 / 20

約20年のバックテストでトータル利益はおよそ+1,300ドル、PF1.71と、成績は控えめです。小さな勝ちを積み重ねる一方で、時々入る大型損切りが利益を大きく削るため、資産カーブは長期停滞と小さな右肩上がりの繰り返しになります。ハイリターンを期待するEAというより、「ロットを抑えればなんとかプラスを維持できる程度」の収益性です。

再現性 スコア 5 / 10

XAUUSD専用のブレイクアウトスキャルEAであり、ブローカーのスプレッド・約定速度・滑りの影響を強く受けます。バックテストではスプレッド60ポイントという厳しめ条件でもプラスでしたが、実運用でスプレッドやスリッページが悪化すれば簡単に成績が崩れる可能性があります。必ず自分のブローカー条件で長期バックテストとデモ検証を行うべきEAです。

検証プロセス スコア 4 / 10

筆者が2005〜2025年のバックテストとフォワード履歴を検証した結果、「高勝率だが1回の損切りが非常に重いブレイクアウト系スキャル」であることが確認できました。2005〜2015年頃までは収益がほぼ停滞しており、特定の相場環境でだけ成績が伸びる傾向も見られます。公開成績だけを鵜呑みにせず、自分の条件で長期検証したうえで採用可否を判断すべきEAです。

この記事を書いた人

Tetsushi O-nishi

FX市場のシステムトレーダー/MQL5プログラマー/EA(自動売買システム)開発者
2021年からEAの開発を開始。数々の戦略を構築→バックテスト検証し、堅守性(ロバストネス)を重視した開発を行う。
自作EAを10個以上リアルアカウントで運用中。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や助言を目的としたものではありません。FX取引にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断で慎重に行ってください。

フォワードテストの分析:まだ「負け」を経験していない初期フェーズ

AI Gold Trading IC Marketsシグナルの統計画面。6週間で18トレードすべてが利益となり、成長率194%・最大ドローダウン1.7%と表示されている。
AI Gold Trading MT5の公式シグナル「AI Gold Trading IC Markets」のフォワード成績。見た目は右肩上がりだが、まだ損切りトレードが一度も発生しておらず、コツコツドカン型の可能性も残っている。

6週間で+194%・勝率100%という派手なスタート

AI Gold Trading MT5の公式シグナル「AI Gold Trading IC Markets」では、運用開始から約6週間で
初期残高100ドルが293.51ドルまで増加し、成長率は約+194%と非常に派手な数字になっています。
取引回数は18トレードとまだ少ないものの、現時点では
18勝0敗(勝率100%)、最大ドローダウンもエクイティベースで約1.7%と、
グラフだけを見るとかなり安定して右肩上がりの曲線を描いています。

トレード頻度は週あたり約2回、平均保有時間は20分程度と表示されており、
短期のスキャルピングとデイトレードの中間くらいのテンポでポジションを取っていることが分かります。
レバレッジ1:500・入金100ドルというかなり軽めの設定で、
「小さい証拠金から短期間で増やせるEA」としてアピールしやすいフォワードに見えます。

まだ一度も損切りが発生していない=リスクが“見えていない”状態

しかし、このフォワード成績には大きな前提があります。
現時点までに一度も損切りトレードが発生していないという点です。
統計を見ると、負けトレード数は0、平均損失も0ドルとなっており、
「どのくらい逆行したら損切になるのか」「1回負けたときにどの程度の損失が出るのか」
といった重要な情報が一切見えません。

このように、勝ちトレードだけが積み上がっているフォワードは
典型的な『コツコツドカンEA』の初期フェーズ
と解釈することもできます。
損切り幅が非常に大きく設定されている場合、たまたままだその水準まで逆行していないだけで、
どこかのタイミングで1発の大きな損切り(または連続損切り)が発生し、
それまでのコツコツ利益を一気に吹き飛ばすリスクがあります。
現時点のシグナルだけを見て「リスクが小さい高勝率EA」と判断するのは危険でしょう。

サンプル数18トレードでは長期的な優位性を判断できない

もう一つの問題は、サンプル数の少なさです。
フォワード期間はまだ約6週間・18トレードしかなく、
統計的に「このEAは長期的に期待値がプラスだ」と言い切れるほどのデータ量とは言えません。
たとえば、最初の18トレードがたまたま全勝だっただけで、
その後に大きな損切りが続けば、右肩上がりの残高曲線は簡単に崩れてしまいます。

特に、AI Gold Trading MT5のように外部APIやニュース情報を参照する複雑なロジックの場合、
市場環境やAPI側の仕様変更によって挙動が変化する可能性もあります。
現状のフォワード成績は「たまたま相性の良い相場が続いた短期サンプルかもしれない」
という前提に立ち、冷静に距離を置いて評価する姿勢が重要です。

現時点での結論:このフォワードだけで信頼するのは時期尚早

総合すると、AI Gold Trading MT5のフォワードテストは
見た目は非常に優秀だが、まだ損切りを経験しておらず、
コツコツドカン型EAである可能性を否定できない段階
と言えます。
現時点では「魅力的に見える初動パフォーマンスの一例」に過ぎず、
このフォワードだけを根拠に高ロットでリアル運用するのはリスクが高いでしょう。

本格的な評価のためには、最低でも数か月〜半年以上のフォワードデータと、
少なくとも数十〜数百トレード分の実績を待つとともに、
バックテスト結果や最大想定損失、1回の損切りでどの程度資金が目減りするのかを
しっかり確認してから判断するのが無難です。

バックテスト結果の分析

バックテスト条件と前提

開発者提供の成績だけに頼らず、筆者自身が MT5 ストラテジーテスターを用いてバックテストを行いました。条件は以下のとおりです。

  • 期間:2005年1月1日〜2025年11月28日(約20年分)
  • 通貨ペア:XAUUSD
  • 初期残高:10,000 USD
  • ロットサイズ:固定 0.01 ロット
  • EAパラメータ:すべてデフォルト
  • スプレッド:60ポイント

ヒストリークオリティは 98%、ティック数は約 2,550 万と表示されており、長期検証としては十分な精度のデータです。

0.01ロット固定・スプレッド60ポイントでXAUUSDを2005年から2025年までAI Gold Trading MT5 EAをバックテストした際の収益曲線。前半はジグザグで停滞し、後半は右肩上がりになっている様子が分かる。
約20年分のバックテスト結果。2005〜2015年頃まではほぼ横ばいで推移し、2015年以降にかけてようやく安定した右肩上がりのカーブが形成されている。
AI Gold Trading MT5 EAのバックテスト統計画面。総トレード数1421回、プロフィットファクター1.71、平均利益約2.34ドルに対して平均損失約37.45ドル、最大エクイティドローダウン約246ドルなどの指標が表示されている。
バックテスト統計では、勝率は高い一方で平均損失が平均利益の十数倍となっており、1回の負けで多くの勝ちを打ち消してしまうリスクリワードの偏りが見て取れる。

およそ20年で +1,300ドルの利益

今回のバックテストでは、最終的なトータルネットプロフィットは約1,332ドルでした。初期残高1万ドルに対して、0.01ロット固定・スプレッド60という条件としては「負けてはいないが、大きくも増えていない」水準です。

プロフィットファクターは1.71で、統計上は勝ち越しているものの、爆発的なリターンが期待できるタイプではなく、むしろ「長期でじわじわ増えるかどうか」という程度の結果にとどまっています。

リスクリワードは極端に悪い

統計を見ると、このEAのリスクリワードの偏りがはっきり表れています。

  • 平均利益:約 +2.34ドル
  • 平均損失:約 -37.45ドル
  • 最大利益トレード:+7.50ドル
  • 最大損失トレード:-49.45ドル

つまり、1回の負けで十数回分の勝ちが吹き飛ぶリスクリワードになっています。勝率自体はロング・ショートともに95%前後と非常に高いものの、負けトレード1発のインパクトが大きいため、
コツコツ積み上げた利益を1回の損切りでほぼ全戻しするような動きがバックテスト上でも何度も見られます。

今回の検証は 0.01 ロット固定なので、最大エクイティドローダウンは約246ドルに収まっていますが、
同じロジックを 0.10 ロットに引き上げれば理論上約2,460ドル
1.00 ロットにすれば約24,600ドル規模のドローダウンになり得ます。
残高に対するパーセンテージではなく、ロットと金額ベースのリスクを必ず意識する必要があります。

2005〜2015年ごろまでの停滞期間

エクイティカーブを全期間で眺めると、2005年〜2015年あたりまでの約10年間はほぼ横ばい〜ジグザグで推移しているのが分かります。
小さな利益を積み上げたあとに大きめの損失で帳消しにされるパターンが続き、グラフ全体としては「行ってこい」を繰り返している状態です。

その後の2015年以降はエクイティカーブが右肩上がりに近づきますが、これはあくまで
たまたまその期間の相場環境とこのEAのロジックが相性が良かった可能性もあり、
「2005年以降どんな相場でも安定して増え続けたEA」というわけではありません。
バックテスト全体を見ると、長期で常に優位性があったというより、特定の期間だけうまくハマっている印象です。

バックテストから読み取れること

今回の検証結果から、このEAについて言えるポイントを整理すると次のとおりです。

  • 0.01ロット・スプレッド60という厳しめの条件でも、約20年でプラス収支にはなっている。
  • ただし利益の大半は「コツコツ勝って時々ドカンと負ける」構造であり、リスクリワードは極端に悪い
  • 最大エクイティドローダウンは約246ドルと金額自体は小さいが、ロットを上げればそのままスケールして増大する。
  • 2005〜2015年頃まではほとんど資産が増えておらず、特定の相場環境に偏って成績が出ている可能性が高い。

したがって、このバックテストは
「ロットを小さく抑えれば長期間なんとか生き残れる可能性はあるものの、
リスクリワードの悪さゆえに一撃で長年の利益を失うリスクを抱えたEA
という評価になります。運用を検討する場合は、ロットと絶対額ベースのドローダウンをよく確認し、
「どこまで負けを許容できるか」を明確にしたうえで使う必要があります。

トレーディングロジックとリスク特性

基本コンセプト:ブレイクアウト側のスキャルピングEA

AI Gold Trading MT5 EAは、XAUUSDの短期チャートでブレイクアウト方向に仕掛けるスキャルピングEAです。開発者の説明では、
レンジを抜けた方向に素早くエントリーし、小さな利幅を狙うことをコンセプトにしています。ロットは小さく、ポジション数も多くありませんが、
テイクプロフィットに対してストップロスが広めに設定されているため、高勝率だがリスクリワードが悪い構造になっています。

M15で見る売買ポイントのイメージ

フォワードの売買履歴を15分足(M15)にプロットすると、白い矢印が買い(Buy)、赤い矢印が売り(Sell)として表示されます。

  • 強く上昇した後の押し目からの戻り売り、あるいはサポート割れからのブレイクアウト売りでSellが入る
  • 下落後の反発やレジスタンスブレイクでBuyが入るケースもあるが、回数は多くない
  • 1日に何十回もトレードするタイプではなく、チャンスが来たときだけエントリーする低頻度スキャルに近い

チャート上では、トレンドが出た局面ではうまく波に乗れているように見えますが、ブレイクが騙しに終わったときは
そのままストップロスまで引っ張られる形になりやすく、1回の損失が重くのしかかります。

XAUUSDのM15チャート上にプロットされたAI Gold Trading MT5 EAのフォワード履歴。白い矢印がBuy、赤い矢印がSellを示し、トレンドの転換点やブレイクアウトでエントリーしている様子が分かる。
M15チャートに表示したフォワードの売買履歴。ブレイクアウト方向にSellやBuyが入り、1日に数回程度の低頻度スキャルピングであることが確認できる。

M1で見る損失トレードの動き

同じ売りトレードを1分足(M1)で拡大すると、エントリー後に長時間ポジションを保有し続け、最終的に大きな損失でクローズされている様子がはっきり見えます。

  • ブレイクアウト方向にSell 0.07ロットでエントリー
  • その後、価格がじわじわと逆行しながら横ばい〜下落を繰り返し、ポジションはしばらく解消されない
  • 最終的に、設定されたストップロスに到達して一気に大きなマイナスで決済される

このように、利確は数ドル単位の小さな勝ちをコツコツ積み上げる一方で、損切りは数十ドル単位の大きな一撃になる設計です。
バックテスト統計でも平均利益約2.34ドルに対し平均損失約37.45ドルと、
1回負けると十数回分の勝ちが消えるリスクリワードが確認できます。

XAUUSDのM1チャート上で、AI Gold Trading MT5 EAのSellポジションが長時間保有された後、大きな損失で決済されている様子。エントリー位置からストップロスまでの距離が大きく、リスクリワードが悪いことが分かる。
M1で拡大した損失トレードの例。ブレイクアウトでSellしたあと値動きが反転し、広いストップロスまで引っ張られた結果、1回の損切りで多くの勝ちトレードを相殺してしまう構造になっている。

開発者が説明するロジック(公称)

開発者の説明によると、本EAは次のような考え方で設計されています(あくまで開発者の主張です)。

  • ボラティリティと価格帯(直近高値・安値)をもとにブレイクアウト方向を検出
  • ノイズフィルターを通過した強い値動きのみを狙ってスキャルピング
  • 各ポジションには固定のテイクプロフィットとストップロスを設定し、ナンピンやグリッドは使わない
  • 高勝率を維持しつつ、長期的な安定収益を目指すコンセプト

コンセプト自体は「レンジのブレイクに素早く乗るスキャルパー」として分かりやすいものの、実際の損失幅とのバランスには注意が必要です。

リスク特性の整理

実際のフォワード履歴とバックテスト結果を踏まえると、このEAのリスク特性は次のようにまとめられます。

  • ブレイクアウト方向へ乗るスキャルピングEAだが、ストップが広いため1回の損失が非常に大きい
  • 高勝率だがリスクリワードは悪く、コツコツドカン(小さな勝ち+ときどき大きな負け)の典型パターンになりやすい
  • トレンドが素直に出た日はうまく機能する一方、ダマシの多いレンジ相場では大きな損失を抱えやすい
  • ロットを上げるほど損失1回あたりの金額が急速に膨らみ、残高の多くを一撃で失うリスクが高まる

まとめると、このEAは「ブレイクアウト局面では気持ちよく勝てるが、リスクリワードの悪さから一発負けのリスクが大きいスキャルピングEA」です。
運用する場合は、ロットを極端に抑え、1回の損切りでどこまで許容できるかを金額ベースで決めておくことが必須と言えるでしょう。

総合評価・まとめ

総合評価

  • AI Gold Trading MT5 EAは、XAUUSDのブレイクアウト方向に仕掛けるスキャルピングEAです。
  • ナンピンやグリッドは使わず、1ポジションごとにTP・SLを設定するシンプルな構造ですが、ストップが広くリスクリワードが極端に悪い点が最大の弱点です。
  • 約20年バックテストでトータル利益は+1,300ドル程度と、「負けてはいないが大きくも増えていない」控えめな成績にとどまっています。
  • 2005〜2015年ごろまではほとんど資産が増えず、特定の相場環境でだけうまく機能している可能性が高いと考えられます。

メリット

  • ナンピン・グリッド・マーチンゲールを使わないため、含み損が雪だるま式に膨らむタイプのEAではない
  • 勝率は高く、小さな利幅をコツコツ取っていく設計なので、トレンドが素直な局面では気持ちよく勝ちやすい
  • ロットを極小に抑えれば、ブレイクアウトスキャルの動きを学ぶための検証用サブ口座として使う余地はある。

デメリット・リスク

  • 平均利益に対して平均損失が十数倍と、1回の負けで長期間の利益をほぼ帳消しにしてしまう「コツコツドカン型」になりやすい。
  • バックテストでは最大エクイティドローダウンは約246ドルだが、ロットを上げるとそのまま金額ベースで膨らみ、口座へのダメージが急激に大きくなる
  • 長期で見ると2005〜2015年の停滞期間が長く、一貫した優位性があるとは言い難い
  • 「安定した資産運用」や「放置で増やしたい」ニーズには合わず、本気のメイン口座や高ロット運用には不向き

どのようなトレーダー向きか

  • ブレイクアウト系スキャルの性質と「コツコツドカン」のリスクを理解したうえで、余裕資金のごく一部を使って低ロットで試したい上級者向け。
  • ドローダウンを極力抑えたい方や、長期で安定した右肩上がりを求める方にはおすすめしづらいEA

まとめ

AI Gold Trading MT5 EAは、見た目の勝率に対してリスクリワードが非常に悪く、一撃の損切りで長期間の利益を失うリスクが常に付きまとうスキャルピングEAです。
使うのであれば、ロットを極端に抑え、「1回の損切りでどこまで負けても許容できるか」を金額ベースで明確に決めたうえで、
あくまでサブ口座・検証用途として慎重に付き合うのが現実的なスタンスと言えるでしょう。

Author of this article

Tetsushi O-nishi

FX市場のシステムトレーダー/MQL5プログラマー/EA(自動売買システム)開発者
2021年からEAの開発を開始。数々の戦略を構築→バックテスト検証し、堅守性(ロバストネス)を重視した開発を行う。自作EAを10個以上リアルアカウントで運用中。

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